ちょっと前まで本屋さんで平置きになっていた「会計の世界史」を読みました。
冒頭はレオナルド・ダ・ヴィンチの話から始まって、何か良くわからなくてつまんないなぁ、と思って読み進めていたのですが…最終的には非常に面白かったです。USCPAをこれから受験する人にも、既に試験にパスした人にも、会計に関わる人には読んでいただきたい本です。
会計にとって重要な概念、例えば発生主義や減価償却がどのようにして生まれたのか。会計士(Accountant)が監査(Audit)を行うようになった時代的背景。さらにREGでよく出てくるSEC(米国証券取引委員会)の初代長官がケネディ大統領のお父さんのジョー・ケネディで、その会計制度改革によってUSGAAPやUSCPAの仕組みが構築されたことなど、会計自体を勉強するだけでは全く触れることのなかった成り立ちを知ることができます。
1500年代にイタリアを中心に乾燥パスタを運ぶ東方貿易が発達し、海賊や天候災害に備えてお金を持ち運ばずに取引を行う為替取引、いわばキャッシュレス決済が拡大。その結果、融資・資金回収・為替発行・決済を記録する必要が出てきたのが簿記の始まりとのこと。
さらにメディチ家が各地で銀行業を行うようになり支店ネットワーク管理を行うHD制が誕生し、そこで関連するビジネスの儲けを適切に管理し、株主に分配するためにフローとストックでの管理、つまりPLとBSが生まれる。
1600年代にはオランダで東インド会社が誕生し、それまでの家族や友人からの出資にとどまらず第三者からの出資、いわばストレンジャー株主からの出資が増えたことで所有と経営の分離の概念が生まれ、株主に対して事業の状況を説明する(account for)役割を負う会計士が必要になりました。さらにここでは内部での不正や盗難を防ぐためのコーポレートガバナンス、配当の適正量を図るコーポレートファイナンス、複数の品物ごとの売れ行きや利益をマネジメントするための管理会計の基礎が出来上がったということになっています。
1800年代にはイギリスで蒸気機関車が登場するなど、さらに巨大な固定資産を持つ事業が登場し、大きな初期投資を伴いながら長期的経営をして株主に安定的な配当を行うという目的で減価償却のスキームが誕生。これに伴い現金主義から発生主義の概念が主流になるという会計的には画期的な変革が起こりました。のちには時価会計や減損会計もここから生まれたと言えます。
また、投資ブームでアメリカに投資マネーが流入する中で会計士はただ説明をするだけではなく、第三者の目で財務状態をチェックする監査(Audit)というニュービジネスを生み出しました。さらにチェックという意味では経営分析も流行し、ratio分析なども投資家の間では行われるようになりました。
そうして1900年第二入るとアメリカで株価暴落と銀行破綻をきっかけとした大恐慌が起こりますが第32代大統領フランクリン・ルーズヴェルトはニューディール政策の中で会計制度改革を行いSECを設立。そこで初代長官に任命されたのがジョー・ケネディ、のちのジョン・F・ケネディ大統領のお父さんでした。この改革の中でジョー・ケネディが投資家保護のためのディスクロージャー、USGAAP、USCPAの仕組みを整えたということです。
これ以降も現代に至るまで本書の内容は続きますが、ここまででも今まで当たり前に接していた会計用語や概念で「そうだったのかぁ」と納得することが皆さんにも結構あるのではないでしょうか?
コロナでお出かけできない日々が続きますが、お時間のある休日にでも一読いただくことをおすすめします。今日はこの辺で。
